段取り八分

ある業界の仕事を現す言葉で「段取り八分」というものがある。考えてみれば多くの業界でこの言葉がしっくりくると思う。

 

我々のような演奏業を始め見世物商売においては、段取りが占める割合はもっと多い。公演本番の10倍以上は稽古があり、実質実入りとなる公演当日においても殆どの時間は準備である。まず自宅での準備に始まり、交通機関での移動。私など器材及び荷物を合わせると30キロ近い重さであるため非常に重労働だ。非力で売っている私にとっては会場に到着した時点で打ち上げたい気分になる。

 

会場入りしたら演出の段取りを書類に起こしお店側のスタッフさんと打ち合わせる。加えてメンバーへの指示書、物販設営、当日リハーサルを済ませ、開場準備まで行うと暇な時間などない。行程によっては食事も採れないのである。

 

好きでやっているとは言え、なかなかの労働である。

 

終演後はお客様の撤収を待ってから器材や物販の片付けに取り掛かる。個人業務だが着替えや化粧落としなどもしていると、都内の現場では打ち上げどころではないものだ。

 

このように、公演そのものを占める時間は、段取り時間に比べると僅かなのだ。80%どころではない。

 

それでも私たちは公演を行う。やりたい仕事をするというのは、こういうことなのである。